細見美術館「若冲展」で知る 伊藤若冲10のこと (後半) [紹介]

細見美術館「若冲展」で知る 伊藤若冲10のこと(前半)>の続きです。

細見美術館で開催中の「生誕300年記念 若冲展-京に生きた画家-」展は
9月4日まで!


細見美術館「若冲展」で知る、伊藤若冲10のこと

1. 京・錦小路の青物問屋生まれ
2. 40歳で引退、画に遊び、画に生きた「画遊人」
3. オリジナル技法「筋目描き」と「拓版画」
4. 親友は大典禅師、コラボ作品も
5. 若冲のことは大典が書き残している
6. 京でゆかりの寺院4つ
7. 黄檗宗に帰依した若冲
8. 若冲は京の人気絵師
9. 弟子もいた!白歳と若演
10. 晩年は「米斗翁」と称す


後半編6~10!

6.京のゆかりの寺院4つ
相国寺(しょうこくじ)>相国寺HP
「釈迦三尊像」と共に、仏を荘厳するために描いた「動植綵絵」を寄進した寺院。

宝蔵寺(ほうぞうじ)>宝蔵寺HP
伊藤家の菩提寺。「桝屋」代々のお墓があります。宝蔵寺は「髑髏図」を所蔵しています。(※本展への出品は前期のみで終了)

壬生寺(みぶでら)>壬生寺HP
若冲が仲間と奉納した狂言のお面が伝わっています。裏に「若冲」と彫ってありました。→展示されています。壬生寺の狂言は年に3回行われますが、このお面が使われるのは「花折」(はなおり)という演目の時だけだそうです。

石峰寺(せきほうじ)>石峰寺HP
若冲が手掛けた石仏群、「五百羅漢像」が残る。若冲の眠る墓もあります。

★各寺院のHPには、それぞれ若冲ゆかりの事が紹介されていて、面白いです。

7.黄檗宗に帰依した若冲
若冲は敬虔な仏教徒で禅宗の黄檗宗に帰依していました。黄檗宗は宇治・萬福寺が大本山。当時は明代仏画をベースにした達磨、羅漢、布袋といったモチーフを描く画家グループが萬福寺にあり、若冲もこうした影響を受けたようです。→鮮やかな朱色の目ヂカラの鋭い達磨図が展示されていました(「朱達磨図」)。
石峰寺も黄檗宗のお寺です。
若冲が愛情を持って生き物を描くのはこうした仏教への深い信仰心があったからなのだな、としみじみ感じます。

8.若冲は京の人気絵師
若冲は当時、たいへんな人気を博していたようです。「平成人物志」という京都の有名人を紹介する本には円山応挙に次いで2番目、池大雅よりも先に紹介されています。
→「平成人物志」の現本が展示されています。

9. 弟子もいた!弟・白歳、若演
若冲の画風はとても人気が高かったので、弟子もいたのですね。「桝屋」の家督を継いだ実弟も「白歳」の名で絵を描いています。また、弟子・若演が描く鶏も展示されています。こちらは初公開だそう。→若演筆「双鶏図(そうけいず)」

10.晩年は「米斗翁」と称す
天明の大火で錦の自宅と画室を焼かれた若冲は石峰寺の門前に住み、絵一枚の値段を「米一斗」と決めて売っていた事から自らの事を「米斗翁」と称しました。「米一斗」で売れたお金で石峰寺の五百羅漢像を作ったそうです。



以上、<細見美術館「若冲展」で知る、伊藤若冲10のこと>でした!


この展覧会を見る前までは、若冲の奇抜な絵にばかり注目してしまっていましたが、伊藤若冲が暮らした京都、交友した大典や家族の事、仏教への深い帰依の事を知って、作品への見方が変わりました。


そして、ゆかりのお寺めぐりをしたくなって、うずうずしてくると思いますよ!


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「生誕300年記念 若冲展 -京に生きた画家‐」
細見美術館
会期:2016年6月25日(土)~2016年9月4日(日)
開館時間:午前10時~午後6時(入館は午後5時30分まで)
休館日:毎週月曜日(祝日の場合、翌火曜日)
http://www.emuseum.or.jp/exhibition/ex048/index.html
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細見美術館「若冲展」で知る 伊藤若冲10のこと (前半) [紹介]

終了が近づいてしまっていますが、京都、細見美術館で開催中の「生誕300年記念 若冲展-京に生きた画家-」展についてです。

若冲の代表作といわれる「動植綵絵(どうしょくさいえ)」こそ展示はないですが、細見美術館所蔵の若冲作品が全て見られます(※前期と後期に分かれて展示されるものもあります)。

本展のタイトルにある通り、
京都に生きた若冲の事が良く分かる内容でしたので、<細見美術館で知る 伊藤若冲10のこと>としてまとめます!

展覧会の会期は9月4日まで!


細見美術館「若冲展」で知る、伊藤若冲10のこと

1. 京・錦小路の青物問屋生まれ
2. 40歳で引退、画に遊び、画に生きた「画遊人」
3. オリジナル技法「筋目描き」と「拓版画」
4. 親友は大典禅師、コラボ作品も
5. 若冲のことは大典が書き残している
6. 京でゆかりの寺院4つ
7. 黄檗宗に帰依した若冲
8. 若冲は京の人気絵師
9. 弟子もいた!白歳と若演
10. 晩年は「米斗翁」と称す


前半編、1~5!

1.錦小路の青物問屋生まれ
伊藤若冲は京都生まれ、京都育ち。
300年前の1716年に京都の錦小路(今の錦市場)の「桝屋」という大きな青物問屋の長男(いわば、お金持ちのご嫡男)として生まれ、23歳の時に家督を継ぎます。当時は商家であっても裕福な家庭では教養として絵を習う事がり、若冲も狩野派の絵師に習っていました。若い頃から絵を描くのが大好きだったようです。


2.画に遊び、画に生きた「画遊人」
40歳の時に「桝屋」の家督を弟に譲り、若冲は引退!自らの事を「画遊人」と称して独自の絵の表現を追求していきます。
→鶏はもちろん、さまざまなモチーフ(海老や里芋、伏見人形などなど)の絵の数々がこの展覧会で紹介されています。

3.オリジナル技法「筋目描き」と「拓版画」
「筋目描き」
水墨画の墨が紙に滲む性質を利用した「筋目描き」。鶏の羽の重なりに使われていて、→展示の「虻に双鶏図(あぶにそうけいず)」で見る事ができます。

「拓版画」
拓版自体は昔からある技法なのでしょうが、若冲の拓版画はいろいろと分からない点があるようです。拓版画は下絵を反転させずに、下絵線を彫って版とするので、黒地に白線で絵が描かれているといった物です。モノクロの黒ベースの世界がかっこいいです。→「乗興舟」(じょうきょうしゅう)、「素絢帖」(そけんじょう)が展示されています。


4. 親友は大典禅師。コラボ作品も。
相国寺の大典禅師(梅荘顕常)と深い親交があり、「若冲」の名前も大典が名付けました。本展には若冲と大典のコラボ作品も展示されています。
若冲が描いた、芦にちょこんと止まる可愛いカワセミの絵に大典が賛をつけているもの(※1)。
二人で京の伏見から大阪の天満橋まで舟で一緒に川下りをした時の風景画に大典が漢詩をつけた絵巻物(※2)。
大典の漢詩36首に若冲が草花や昆虫を描き、拓版で制作した本(※3)など。
文化人なおじさま二人による風流なコラボです♡

※1「芦花翡翠図」(ろか・ひすいず)水墨画
※2 「乗興舟」(じょうきょうしゅう)モノクロの拓版画の絵巻
※3 「素絢帖」(そけんじょう) モノクロの拓版画本

5.若冲のことは大典が書き残している
現在、私たちが知る若冲エピソードはほとんどが大典の書き残している物に依るそうです。大典の記録に、「若冲に自らの事を書き残す事をすすめたが、若冲は書かないので仕方がないから私が書き記す」のような事が残っていて、面白いです。その資料の展示もあります。


6~10は後半へ続く。
細見美術館「若冲展」で知る、伊藤若冲10のこと(後半)


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「生誕300年記念 若冲展 -京に生きた画家‐」
細見美術館
会期:2016年6月25日(土)~2016年9月4日(日)
開館時間:午前10時~午後6時(入館は午後5時30分まで)
休館日:毎週月曜日(祝日の場合、翌火曜日)
http://www.emuseum.or.jp/exhibition/ex048/index.html
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「若冲展」の『動植綵絵』を見逃した方!見てみたい方!京都・相国寺へ! [紹介]

東京都美術館の「生誕300年記念 若冲展」(2016年4月22日~5月24日)を逃した方、お目当てはやはり「動植綵絵」(どうしょくさいえ)30幅と「釈迦三尊像」3幅の一斉鑑賞でしたよね。あるいはメディアで紹介されてご興味を持った方も沢山いると思います。

そんな、
33幅、勢ぞろいを鑑賞したかったと残念に思っている方へ!

あるいは
「動植綵絵」いったいどんな絵か見てみたいと思っている方へ!


耳より情報です!!


なんと、京都 相国寺は承天閣美術館で12月4日まで、全部、見られます!!(相国寺は ≪しょうこくじ≫ 、承天閣は ≪じょうてんかく≫ と読みます)

他にも鹿苑寺(金閣寺)大書院に描かれた障壁画50面すべて見れます!!


ただし...


「動植綵絵」30幅はコロタイプ印刷の複製品ではあります。

しかし!

「釈迦三尊像」3幅は本物です!


それでも!相国寺で見る事は特別!


なぜなら、もともとは「動植綵絵」30幅は「釈迦三尊像」3幅と一緒に相国寺に寄進されたものなのです。若冲による独創的な絵は、かつては年に一度、相国寺の大事な法要の日に方丈に飾られ、祈りの空間を荘厳していたのです。

現在は、相国寺に「釈迦三尊像」3幅が残り、「動植綵絵」30幅は宮内庁の管理する三の丸尚蔵館の所蔵となっています。

(明治になり、廃仏毀釈の影響により財政がひっ迫した相国寺は「釈迦三尊像」だけを残し、「動植綵絵」30幅を(おそらく苦肉の策で)明治天皇に献納し、その下賜金でもってお寺を立て直す事ができたという事です。)

それに、若冲は相国寺の梅荘顕常(大典禅師)と親交が深く、生涯の友でした。大典は若冲の絵師としての才をいち早く見出し支援し、鹿苑寺(金閣寺)大書院の障壁画を若冲に描かせたのも大典ですし、「動植綵絵」の寄進も大典の勧めでありました。それくらい相国寺と若冲との縁は深かったのです。若冲のお墓もありますよ。


というわけで、今回展示されている「動植綵絵」がコロタイプ印刷(※)の複製画だとしても、それでも!この「相国寺」という場所で!若冲の描いた「釈迦三尊像」3幅と一緒に並んでいるのですから!見る価値はじゅうーぶんに、あります!それに、印刷の複製画と言っても、超・高精細です。美術本や図録では分からない原寸大の迫力も体感できます!「動植綵絵」は1幅1幅が大きいので、それはそれは見応えがあります。

(※コロタイプ印刷とは、工程にすごく手間のかかる高度かつ高精細な複製技術です。顕微鏡で拡大して見ても本物と大差ない程らしいです。)


私は知らなかったのですが、2007年にここ相国寺・承天閣美術館で「釈迦三尊像」3幅と三の丸尚蔵館所蔵の「動植綵絵」30幅が120年ぶりに一挙に揃う記念すべき展覧会があったのです。この時の展覧会の様子は弐代目・青い日記帳さんの ≪こちら≫ の記事に書かれています。


それに、承天閣美術には、ここでしか見る事のできない若冲作品があるのです!


それは「鹿苑寺大書院障壁画」(ろくおんじ・だいしょいん・しょうへきが)のうち、床の間の障壁画2つ!!

「葡萄小禽図」(ぶどう・しょうきんず)
「月夜芭蕉図」(つきよ・ばしょうず)

これらは、若冲が鹿苑寺の大書院の床の間の壁に水墨画で書いた絵です。床の間の壁ですから普通はその建物に行かないと見れないですよね。それが!承天閣美術館に移築展示されているのです!部屋の一部、床の間の部分とその前面の畳が移築されガラスケースの中に展示されています。ここでしか見られません!(それとも、この床の間ごと貸し出したりする事もあるのでしょうか??もし、他でも見れたらごめんなさい!)


床の間の障壁画は常設展示です。これを見に行くだけでも承天閣美術館へ行く価値があると思うので、この展覧会を機に見に行く、というのでも良いと思います。


他にも本展覧会では「鹿苑寺大書院障壁画」の「襖絵」が全種類と、掛け軸もたくさん、見る事ができます。

トビ(東京都美術館)の「若冲展」に出品されていた以下の襖絵も見る事ができますヨ。

「葡萄小禽図襖絵」(ぶどう・しょうきんず・ふすまえ)
「松鶴図襖絵」(しょうかくず・ふすまえ)
「芭蕉叭々鳥図襖絵」(ばしょう・ははちょうず・ふすまえ)
「菊鶏図襖絵」(きくけいず・ふすまえ)

他にもトビ「若冲展」の作品リストを見ると、他にも相国寺及び鹿苑寺所蔵の作品出品は以下がありました。

「竹虎図」(ちくこず)
「鳳凰之図」(ほうおうのず)
「厖児戯箒図」(ぼうじぎ・ほうず)
「亀図」(かめず)

これらも展示されていると思います。”思います”というあやふやな事を言うのは、実は「動植綵絵」と「床の間」鑑賞に夢中で、他の作品を見る時間がなくなってしまったのです...。ぜひ、みなさまの目でご覧になってみてください。


というわけで、トビ「若冲展」見逃しには是非!


(次の記事で感想をアップ <【感想】承天閣美術館「生誕300年記念 若冲展」>)


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生誕300年記念『伊藤若冲展 』
承天閣美術館
会期:2016年7月1日(金)~ 2016年12月4日(日) 
開館時間:午前10時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日:会期中無休
http://www.shokoku-ji.jp/j_nyukan.html
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ちなみに、相国寺のお堂などは通常は拝観できないようです。せっかく京都へ行くのなら秋の特別拝観日に合わせて行くのがいいかもしれないですね。

●秋の特別拝観日:9月25日~12月15日
●春の特別拝観日:3月24日~6月4日
●拝観できる場所:「法堂」、「方丈」、浴室(春のみ)、開山堂(秋のみ)
注意1)2017年以降は上記の期間かどうか分かりませんので、相国寺へお問い合わせください。
注意2)お堂の拝観時間は午前10:00〜午後4:00です。美術館と異なるのでご注意くださいね。


ちなみに、ちなみに。

相国寺へお参りするのでしたら、坐禅会に参加するのもよいかも!開催日は、毎月第2・第4日曜日のよう。(8月は休会、12月第4日曜は休会。※2016年8月現在)坐禅の後は法話も聞けるようです。(相国寺は臨済宗)

若冲も大典と共に坐禅を組んだかもしれないですよね。うふふ


★承天閣美術館の若冲展と併せて見れる、京都の若冲関連の寺院の特別公開情報★
■宝蔵寺01→こちら
2016/10/28(金)~2016/11/17(月)
■宝蔵寺02→こちら
■金戒光明寺→こちら
2016/11/1(火)~2016/12/4(日)
■両足院→こちら
2016/12/9(金)~2017/1/29(日) ※拝観休止日あり
■信行寺→こちら
2016/11/11(金)~2016/11/13(日)
■壬生寺→こちら
2016/10/8(土)


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