オススメ♪ 古美術鑑賞!技法がよく分かる根津美術館の展覧会 [感想]

お盆の頃の8月某日、京都で若冲を巡り
近世絵画のスイッチが激しくONになって東京に戻ったその週に根津美術館でうってつけの展覧会に遭遇!


「はじめての古美術鑑賞ー絵画の技法と表現」


とてもオススメしたい良い展覧会だったのですが、これまた会期間近でごめんなさい...!
9月4日(日)までです。


美術の展覧会では、作品の技法について触れた説明書きが一緒に紹介されていたりますが、本展覧会は絵画の技法を説明する為に!作品が展示されています。

技法についてしらなくて鑑賞しても、もちろん楽しい。

でも、技法のことを知ると、注目するポイントが沢山でてきて、絵画との対話の仕方が変わります!
すごく解りやすくて、名品鑑賞と同時にお勉強ができるので贅沢な展覧会でした!

展覧会では以下の技法が紹介されていました。

「たらしこみ」
「はつぼく(溌墨)」
「そとぐま(外隈)」
「つけたて(付立て)」
「きんうん(金雲)」
「はくびょう(白描)」
「きりかね(截金)」
「うらはく(裏箔)」
「うんげんさいしき(繧繝彩色)」


私が印象に残った作品は、「たらしこみ」技法で葉っぱが描かれている、喜多川相説(きたがわ そうせつ)筆の六曲一双の屏風「四季草花図屏風」です。

kitagawasosetsu01.jpg
喜多川相説 「四季草花図屏風」 右隻

kitagawasosetsu02.jpg
喜多川相説 「四季草花図屏風」 左隻
出典:http://blog.livedoor.jp/a_delp/archives/1060058584.html


屏風で大きな作品なので、実物は100倍素敵です。

喜多川相説は俵屋宗達の工房を継承した画家で、「たらしこみ」は俵屋宗達はじめ琳派が好んで使用した技法という事です!


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「はじめての古美術鑑賞ー絵画の技法と表現ー」
根津美術館
会期:2016年7月23日(土)~2016年9月4日(日)
開館時間:午前10時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
http://www.nezu-muse.or.jp/
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「アルバレス・ブラボ写真展」世田谷美術館(8/28まで!) [感想]

Manuel Álvarez Bravo
マヌエル・アルバレス・ブラボ

というメキシコの写真家の展覧会をみてきました。
私は全然知らなかった方ですが、ちらしに掲載されている写真が素敵で気になったので見に行ってきました。


「アルバレス・ブラボ写真展ーメキシコ、静かなる光と時」が正式タイトルです。
国内最大規模の回顧展を世田谷美術館で、3日後(!)の8月28日(日)までやっています。

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全てモノクロプリントの写真です。
展示数は写真が192点とたっぷりです。


ん〜、いいもの見たなー。


アルバレス・ブラボさんの写真は静かなのだけど、映し出しているモノの存在感を強く感じる作品でした。

うるさくないし、いろいろ押し付けがましくない感じです。
(私はブラボさんの写真のような人間になりたい…)


被写体としては、人も多く撮っているし、日常の街の風景も撮っていますが、
その中でも私は、晩年の <「内なる庭」シリーズ>の植物の写真がとても、好きでした。

自宅の庭を撮っているシリーズなのだけど、木の枝が白壁に影を落としていて、本当にきれいでした。



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マヌエル・アルバレス・ブラボ・アーカイヴ蔵(C)Colette Urbajtel / Archivo Manuel Alvarez Bravo, S.C.



あぁ、木の枝ってきれいなんだな、
光ってきれいなんだな、
影ってきれいなんだな。
こんなに身近なものが、こんなにもきれいなんだな。
世界ってうつくしいな。

と、沁み入りました。


”どの芸術にも共通する詩情は、シンプルな手立てを通して得られる、複雑な現象の表現です。そうした手だては自らに正直で、おのれの限界に忠実です。 しかしひとたび情熱が注がれ、静けさの中で口を開くと、雄弁になるのです。”

ーアルバレス・ブラボ


ん、ちょっとよく分からないけど、シンプルな表現こそ雄弁だ、という事?かな??
違う?誰か、教えて〜。



あと、アルバレス・ブラボが写真家として活躍した時代は、メキシコ革命を経て壁画運動や前衛芸術が盛り上がる時代と重なっています。フリーダ・カーロとかメキシコの壁画運動に興味のある方はより深く本展覧会を見ることができるかもしれません。

私は全然疎いので、流してしまいました。
でも、アンドレ・ブルトンと交友があり、アルバレス・ブラボが顔写真を撮っていたのは興味深かったです。


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「アルバレス・ブラボ写真展ーメキシコ静かなる光と時」
世田谷美術館
会期:2016年7月2日(土)〜2016年8月28日(日)
時間:午前10時〜午後6時(入場は午後5時30分まで)
http://www.setagayaartmuseum.or.jp/sp/
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石峰寺で五百羅漢像 ー若冲 唯一の立体作品を見にいくー [日本美術]

石峰寺(せきほうじ)。

京都の伏見の方にある黄檗宗(おうばくしゅう)のお寺です。

伊藤若冲が手がけた五百羅漢像の石像群があります。

…という事を、細美美術館の「生誕300年記念 若冲展 ー京に生きた画家ー」で知ったので、美術館を出たその足で訪れました。

絵画は東京の展覧会で見る機会はあり得るけれど、お寺の石像群は行かないと絶対見れませんものね。
京阪電車でトコトコ「深草駅」まで。

「若冲ゆかりの寺院」と紹介されていたので、立派なお寺を想像していたけれど、目指す石峰寺は住宅街の先に続く、細い階段を登ったところに!


想像と全然違う!とても小さなお寺でした。

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寺門が中国風!かわいらしい♡
黄檗宗のお寺の特徴なのかな?
本山の宇治、萬福寺も中国風の門なんですって。

image.jpg

image.jpg

門からお堂へと続く道。
草花が元気に出迎えてくれます。

image.jpg

残念、五百羅漢像の写真は撮れないです。

拝観料を払って、中へ進むと若冲のお墓が眺めの良い場所にありました。
五百羅漢像は更にその先の裏山へ。

竹林の中に、羅漢様たちがたくさん。
お釈迦さまの色々な有名なシーンだったりするみたいです。
石像たちは風雨にさらされて、まるく削られていますが、それがまたいい。
優しい表情は初めから若冲がそのように作ったのでしょうね。(若冲は作ったのは下絵。実際に彫ったのは石工さん)

ぐるりと一周、15分ほどの静かなひと時となりました。

ただ、夏なので、蚊がね。
でも殺生はいけません。小さな命もまた命。
うちわで払うだけに。

受付で防虫スプレーとうちわを貸してくださいましたよ。

でも、夏に訪れる場合は脚を出さない格好が良さそうです。


みなさまも、京都に来られた際は立ち寄られてみてください。
伏見稲荷神宮のそばです。


門前からの眺め。
いい眺め♡

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★若冲作品 特別拝観情報★
「秋の特別展示会ならびに若冲忌」
期間:2016年9月1日〜2016年9月10日
時間:午前9時〜午後5時
・掛け軸「虎図」はじめ14幅
・版画6点

「若冲忌」は9月10日(土)10時より本堂で回向。その後墓前回向。
一般の方の御焼香の用意もあるようです。


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石峰寺
開館時間:
(3月〜9月)午前9時~午後5時
(10月〜2月)午前9月〜午後4時
http://www.sekihoji.com
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細見美術館「若冲展」で知る 伊藤若冲10のこと (後半) [紹介]

細見美術館「若冲展」で知る 伊藤若冲10のこと(前半)>の続きです。

細見美術館で開催中の「生誕300年記念 若冲展-京に生きた画家-」展は
9月4日まで!


細見美術館「若冲展」で知る、伊藤若冲10のこと

1. 京・錦小路の青物問屋生まれ
2. 40歳で引退、画に遊び、画に生きた「画遊人」
3. オリジナル技法「筋目描き」と「拓版画」
4. 親友は大典禅師、コラボ作品も
5. 若冲のことは大典が書き残している
6. 京でゆかりの寺院4つ
7. 黄檗宗に帰依した若冲
8. 若冲は京の人気絵師
9. 弟子もいた!白歳と若演
10. 晩年は「米斗翁」と称す


後半編6~10!

6.京のゆかりの寺院4つ
相国寺(しょうこくじ)>相国寺HP
「釈迦三尊像」と共に、仏を荘厳するために描いた「動植綵絵」を寄進した寺院。

宝蔵寺(ほうぞうじ)>宝蔵寺HP
伊藤家の菩提寺。「桝屋」代々のお墓があります。宝蔵寺は「髑髏図」を所蔵しています。(※本展への出品は前期のみで終了)

壬生寺(みぶでら)>壬生寺HP
若冲が仲間と奉納した狂言のお面が伝わっています。裏に「若冲」と彫ってありました。→展示されています。壬生寺の狂言は年に3回行われますが、このお面が使われるのは「花折」(はなおり)という演目の時だけだそうです。

石峰寺(せきほうじ)>石峰寺HP
若冲が手掛けた石仏群、「五百羅漢像」が残る。若冲の眠る墓もあります。

★各寺院のHPには、それぞれ若冲ゆかりの事が紹介されていて、面白いです。

7.黄檗宗に帰依した若冲
若冲は敬虔な仏教徒で禅宗の黄檗宗に帰依していました。黄檗宗は宇治・萬福寺が大本山。当時は明代仏画をベースにした達磨、羅漢、布袋といったモチーフを描く画家グループが萬福寺にあり、若冲もこうした影響を受けたようです。→鮮やかな朱色の目ヂカラの鋭い達磨図が展示されていました(「朱達磨図」)。
石峰寺も黄檗宗のお寺です。
若冲が愛情を持って生き物を描くのはこうした仏教への深い信仰心があったからなのだな、としみじみ感じます。

8.若冲は京の人気絵師
若冲は当時、たいへんな人気を博していたようです。「平成人物志」という京都の有名人を紹介する本には円山応挙に次いで2番目、池大雅よりも先に紹介されています。
→「平成人物志」の現本が展示されています。

9. 弟子もいた!弟・白歳、若演
若冲の画風はとても人気が高かったので、弟子もいたのですね。「桝屋」の家督を継いだ実弟も「白歳」の名で絵を描いています。また、弟子・若演が描く鶏も展示されています。こちらは初公開だそう。→若演筆「双鶏図(そうけいず)」

10.晩年は「米斗翁」と称す
天明の大火で錦の自宅と画室を焼かれた若冲は石峰寺の門前に住み、絵一枚の値段を「米一斗」と決めて売っていた事から自らの事を「米斗翁」と称しました。「米一斗」で売れたお金で石峰寺の五百羅漢像を作ったそうです。



以上、<細見美術館「若冲展」で知る、伊藤若冲10のこと>でした!


この展覧会を見る前までは、若冲の奇抜な絵にばかり注目してしまっていましたが、伊藤若冲が暮らした京都、交友した大典や家族の事、仏教への深い帰依の事を知って、作品への見方が変わりました。


そして、ゆかりのお寺めぐりをしたくなって、うずうずしてくると思いますよ!


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「生誕300年記念 若冲展 -京に生きた画家‐」
細見美術館
会期:2016年6月25日(土)~2016年9月4日(日)
開館時間:午前10時~午後6時(入館は午後5時30分まで)
休館日:毎週月曜日(祝日の場合、翌火曜日)
http://www.emuseum.or.jp/exhibition/ex048/index.html
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細見美術館「若冲展」で知る 伊藤若冲10のこと (前半) [紹介]

終了が近づいてしまっていますが、京都、細見美術館で開催中の「生誕300年記念 若冲展-京に生きた画家-」展についてです。

若冲の代表作といわれる「動植綵絵(どうしょくさいえ)」こそ展示はないですが、細見美術館所蔵の若冲作品が全て見られます(※前期と後期に分かれて展示されるものもあります)。

本展のタイトルにある通り、
京都に生きた若冲の事が良く分かる内容でしたので、<細見美術館で知る 伊藤若冲10のこと>としてまとめます!

展覧会の会期は9月4日まで!


細見美術館「若冲展」で知る、伊藤若冲10のこと

1. 京・錦小路の青物問屋生まれ
2. 40歳で引退、画に遊び、画に生きた「画遊人」
3. オリジナル技法「筋目描き」と「拓版画」
4. 親友は大典禅師、コラボ作品も
5. 若冲のことは大典が書き残している
6. 京でゆかりの寺院4つ
7. 黄檗宗に帰依した若冲
8. 若冲は京の人気絵師
9. 弟子もいた!白歳と若演
10. 晩年は「米斗翁」と称す


前半編、1~5!

1.錦小路の青物問屋生まれ
伊藤若冲は京都生まれ、京都育ち。
300年前の1716年に京都の錦小路(今の錦市場)の「桝屋」という大きな青物問屋の長男(いわば、お金持ちのご嫡男)として生まれ、23歳の時に家督を継ぎます。当時は商家であっても裕福な家庭では教養として絵を習う事がり、若冲も狩野派の絵師に習っていました。若い頃から絵を描くのが大好きだったようです。


2.画に遊び、画に生きた「画遊人」
40歳の時に「桝屋」の家督を弟に譲り、若冲は引退!自らの事を「画遊人」と称して独自の絵の表現を追求していきます。
→鶏はもちろん、さまざまなモチーフ(海老や里芋、伏見人形などなど)の絵の数々がこの展覧会で紹介されています。

3.オリジナル技法「筋目描き」と「拓版画」
「筋目描き」
水墨画の墨が紙に滲む性質を利用した「筋目描き」。鶏の羽の重なりに使われていて、→展示の「虻に双鶏図(あぶにそうけいず)」で見る事ができます。

「拓版画」
拓版自体は昔からある技法なのでしょうが、若冲の拓版画はいろいろと分からない点があるようです。拓版画は下絵を反転させずに、下絵線を彫って版とするので、黒地に白線で絵が描かれているといった物です。モノクロの黒ベースの世界がかっこいいです。→「乗興舟」(じょうきょうしゅう)、「素絢帖」(そけんじょう)が展示されています。


4. 親友は大典禅師。コラボ作品も。
相国寺の大典禅師(梅荘顕常)と深い親交があり、「若冲」の名前も大典が名付けました。本展には若冲と大典のコラボ作品も展示されています。
若冲が描いた、芦にちょこんと止まる可愛いカワセミの絵に大典が賛をつけているもの(※1)。
二人で京の伏見から大阪の天満橋まで舟で一緒に川下りをした時の風景画に大典が漢詩をつけた絵巻物(※2)。
大典の漢詩36首に若冲が草花や昆虫を描き、拓版で制作した本(※3)など。
文化人なおじさま二人による風流なコラボです♡

※1「芦花翡翠図」(ろか・ひすいず)水墨画
※2 「乗興舟」(じょうきょうしゅう)モノクロの拓版画の絵巻
※3 「素絢帖」(そけんじょう) モノクロの拓版画本

5.若冲のことは大典が書き残している
現在、私たちが知る若冲エピソードはほとんどが大典の書き残している物に依るそうです。大典の記録に、「若冲に自らの事を書き残す事をすすめたが、若冲は書かないので仕方がないから私が書き記す」のような事が残っていて、面白いです。その資料の展示もあります。


6~10は後半へ続く。
細見美術館「若冲展」で知る、伊藤若冲10のこと(後半)


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「生誕300年記念 若冲展 -京に生きた画家‐」
細見美術館
会期:2016年6月25日(土)~2016年9月4日(日)
開館時間:午前10時~午後6時(入館は午後5時30分まで)
休館日:毎週月曜日(祝日の場合、翌火曜日)
http://www.emuseum.or.jp/exhibition/ex048/index.html
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